長き世の とをのねふりの
皆めさめ 波のり舟の
音のよきかな

日本人は古来より「夢見」にうるさい民族ですね。
その吉凶に一喜一憂して、よい夢をみようと努力してきました。中でも一年の最初にみる「初夢」に対しては特別な思い入れがあったように思います。
では「夢」とは一体何なのか、そこにはどんな意味があるのか。あなたの千年最後の初夢は?。


夢をみるメカニズム〜夢はどんなときに見るのか〜

人問の睡眠時間を8時間だとすると、一日の三分の一は眠っていることになります。
私たちは眠りについている間に、浅い眠りと深い眠りを交互に繰り返しています。眠っている人を観察してみると、まぶたの下で眼球がピクビクと動いている時があります。これは「レム睡眠」といって、浅い眠りの状態。眼球運動が見られない時は深い眠りで、「ノンレム睡眠」と呼ばれています。レム睡眠は一晩に四、五回起こりますが、この時に私たちは夢をみています。
ですから、一晩にレム睡眠の数だけ夢をみていることになるのですが、覚えているのは一番最後に見た夢だけ・・・、ということが多いようです。
では、なぜ人は夢をみるのでしようか。また、私たちが夢をみることにはどんな意昧があるのでしょうか。

初夢はいつの夢?
初夢とはご存知、新年最初に見る夢。しかし、いつみた夢が初夢なのかは意外と知られていません。
鎌倉時代に活躍した西行法師の「山家集」には立春の朝の夢と記されていますが、これが中世になると節分の夜から立春の明け方までの夢を初夢と呼ぴました。江戸時代元禄の頃になると除夜の夢を、また大みそかに寝ない習慣ができてくると元旦の夢をそう呼ぴました。
節分の夜、大みそかの夜、元旦の夜、二日の夜などの諸説がある中、現在ては一日から二日にかけての夢ということて定着しているようです。

一富士、二鷹、三ナスピー
今年一年の運勢が決まるといわれる「初夢」。一般的に一富士、二鷹、三ナスピ」が吉相の夢と言われています。このいわれは何か・・・、有力な説として浮かび上がってきたのが徳川家康。
家康がまだ駿河国の領主だったころ、富士の裾野で鷹狩りを楽しんでいました。その時、たわわに実るナスの畑を見てこう言いました。
「日本一の富士に、吉鳥の鷹、そしてナスとは大吉兆じや。我が運は大いに栄える」と。確かに家康は天下をとり、徳川幕府260年の礎を築きました。

夢の意味〜「顕彰夢」と「潜在夢」〜
夢の分析研究で代表的な精神分析医、シグムンド・フロイト(1856-1939)は、夢とは「過去の満たされなかった願望が形を変えて表現されたもの」とし、その弟子のカール・ユングは、「夢は無意識からの自分へのメッセージ」と解釈しました。
子供の夢は、願望を充足させるためにみることが多いので、『遊園地に行きたい?』と思ったら、ストレートに遊園地に行って遊んでいる夢をみます。
しかし、大人の夢はもう少し複雑です。心的葛藤やストレス、コンプレックス、そして自分が置かれた環境では適えられない不道徳な願望が、別の物に加工されたり、置き換えられたりして出てくることが多いのです。
夢のうわべのストーリーは「顕任(けんざい)夢」、加工され置き換えられた夢は「潜在(せんざい)夢」と呼ぱれ、その意味は分けて考えられるのです。
例えぱ、『お金をたくさん拾った夢』をみたとしたら、顕在夢は単純にお金を拾ったストーリー。でも潜任夢では、お金は「世間的な地位」や「権力欲」「名誉欲」に、そしてそれを拾うという行為は「降ってわいた幸運を期待する願望やそれに付随する葛藤」などに置き換えられるようです。
しかし、ここで注意しなければいけないのは、その置き換えは、一人ひとり違うということです。生い立ちや今までの体験、現在の生活条件によって象徴しているものが異なってくるのてす。
また、自分の無意識な欲望や願望を知ることに、夢が大きな手がかりになります。
フロイトも「夢」と言い間違いや勘違いなどの「失敗行為」は、その人の内面や無意識を分析するために有効であると考えました。
夢は映像なので、枕元にノートを置き、夢日記として語化します。すぐに置さ換えた事柄や象徴するものが分からなくても、夢日記をつけていくことによって、夢の内容やパターンを通して自分が抱えている無意識的葛藤を知る手がかりとすることも可能です。
つまり、ある程度は夢で自己分析ができるということです。
さらに、前出の『お金をたくさん拾った夢』のように気持ちが高揚する夢をみた場合、それが顕花夢であっても「良いことがあるかもしれない・・・」という自己暗示によって、現実生活がいきいきしてくるという効用もあるようです。
まだ表だ夢は未知の領域です。時々の内容で一喜一憂するよりもゆったりと構えて楽しむのがよいようです。
(香川県精神保健福祉センター所長・花岡正憲氏)



ユングの発見した夢の基本パターン
フロイトの弟子・ユングは、多くの夢を研究するうち、人の夢に共通して現れるものの存在、「アーキタイプ(元型)」を発見しました。代表的な5つを以下に示します。
シャドウ(影)シャドウとは、人問の無意識の中に取り残された、未発達な人格。夢の中では自分の中にあるイヤな部分が、同性の人物として、また怪獣やお化けなど恐ろしいものとして現れることが多いようです。つまり、嫌いな知人が夢に出てくるのは、自分にも同様の一面があるということ。また、夢で友人から相談を受けたら、それば自分でも気付いていないあなた自身の悩みなのかもしれないのてす。
ペルソナ(仮面)私たちは、現実社会の中て、様々なペルソナをかぶることにより、人間聞係を円滑に運んでいます。夢の中では、あなたがどんなペルソナを付けているかが、洋服や靴、アクセサリーなど身に付けるものとして表現されます。夢でその場にそぐわない服装をしている時は、実生活でもTPOに合わないペルソナを付けていないか、振り返ってみてください。
アニマとアニムス
男性の無意識の申に秘められた女性性がアニマで、アニムスはその逆です。男性は自分の中のアニマを、女性はアニムスを意識することで、完成された人間に近づいていきます。夢の中の異性は、すべてアニマ・アニムスと言えるでしょう。本当は独身なのに、夫や妻が夢に出てくるのは、自分が身に付けなければならない男性的・女性的側面を表していると考えられます。
グレートマザー
個人的な母親像を超えた母性。女性は、グレートマザー性の自覚により本当の母親になり、男性は心の中のグレートマザーから独立することで一人前の男になるのです。
夢では、女神、老婆、魔女、化け描、洞窟などとして現れます。怪獣退治の夢は、自我の象徹てあるヒーローが、グレート・マザーである怪獣を倒し、新たなる自我を確立しているという解釈もできます。
老 賢 人父親のイメージ。老賢人は、男性にとっては権威の象徴てすが、女性にとっては依存の対象となり、ファザー・コンプレックスと密接に関わっています。夢の中では、仙人、童子、王様、社長、雷鳴などの形で現れます。見知らぬ老人が、実は自分の父親の象徹であるケースも多いといいます。また、警察官などの権威者に保護される夢は、だれかに守られたいという願望の現れなのかもしれません。



「羊が1匹、2匹・・・」って、本当に効果あるの?
眠れない夜のおまじない?として、定着した「羊が一匹、二匹、三匹・・・」というあれ。本当に効果があるのでしょうか。
脳が激しく動いている時は、人間はなかなか眠れません。脳の動ぎをペースダウンさせるには、単調な作業を繰り返すといいといわれています。電車に乗っていたり、波にゆらゆら揺られていると眠くなることって、ありますよね。そう考えると「羊」の話も結構信憑性がありそうです。他にも雨音や時計の音など、単調なリズムや音楽に耳を傾けるのもいいそうです。
音楽といえぱ、バッハの「ゴールドベルク変奏曲」は、不眠に悩んでた知人のために作曲されたとか。

初夢は「宝船」で縁起をかつげ!
一年の計は元旦にあり。「初夢にはラッキーで、幸先のいい夢をみたい」。昔の人だって、もちろん同じ事を思いました。その思いが作り上げた「初夢必勝法」を紹介しましょう。
それは七福神が乗った宝船の絵を枕の下に敷いて寝るということ。室町時代を起源としたこの習慣は、戦国時代の武将も行っていたほど縁起のいいおまじないです。
江戸時代には年末になると宝船&七福神の絵を売って歩く人もいたほどの人気のおまじないだったのです。初夢用の宝船&七福神の絵には「長き世の とをのねふりの皆めさめ 波のり舟の音のよきかな」という廻文(かいもん)の歌が書かれています。上から読んでも下から読んでも同じ文句のこの歌を、三回唱えて寝るのが幸運ゲットの鍵だそうです。万が一、夢見が悪かったなら、翌朝この給を川に流せばOK。また、土に埋めるという説もあります。
えっ、初夢で一年の運勢が決まるなんて・・・。そんなことを考えただけで、おちおち眠れないって!?(^o^)/。

参考=四国新聞オアシス(1998/12/25版)